Everyday Magic-筆に想いを

心に響く言葉や詩歌を、書でつづる

幼な子の喜びと悲しみ-ウィリアム・ブレイク 「無垢と経験の歌」より

 

 

こちらは晴れていますが、 

 

風があると、寒いです。

 

1月も、もう一週ほどで、2月の暦がちらつくと

 

春の兆しを探したくなりますね。

 

 

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「喜び」という名の幼な子 ウィリアム・ブレイク (半紙)

 

「喜び」という名の幼な子

 

ぼくには名前がないんだ

まだ生まれて二日しかたっていないから。

おまえは何て呼んでほしいの?

ぼくは幸せだよ

喜びがぼくの名前だよ。

すてきな喜びがおまえの上に訪れますように!

 

かわいい喜び!

生まれて二日しかたっていないすてきな喜び、

すてきな喜びと呼んであげよう。

おまえは笑い、

そのあいだに私は歌をうたう、

すてきな喜びがおまえの上に訪れますように!

          (松島正一訳)

 

       Infant Joy

I have no name

I am but twi days old.―

What shall I call thee ?

I happy am

Joy is my name.―

Sweet joy befall thee !

 

Pretty joy !

Sweet joy but two days old.

Sweet joy I call thee ;

Thou dost smile,

I sing the while

Sweet joy befall thee.

               "Songs of Innocence "     William Blake

 

詩人としてだけでなく、画家、彫版師など

 

多面的な顔を持つイギリスのウィリアム・ブレイク

 

むしろ、生前は、詩人としては認められず、

 

一介の彫版師として過ごしたともあります。

 

以前、ここでも、よく知られた詩の一つを載せています。

 

koboaoineko.hatenablog.com

 

対訳 ブレイク詩集―イギリス詩人選〈4〉 (岩波文庫)  対訳ブレイク詩集(岩波文庫)より

 

 

さて、今回とりあげた詩は、ブレイクの作品

 

『無垢と経験の歌』"Songs of Innocence and of Experience "

 

の『無垢の歌』にあります。

 

この世に生を受け、ほとばしるような歓喜に輝いています。

 

ところで、同じ幼な子でも、『経験の歌』では、

 

実に対照的な詩となっています。

 

「悲しみ」という名の幼な子

 

母さんは呻(うめ)いた! 父さんは泣いた。

ぼくは危険な世界へとおどり出た。

たよりなく、裸で、かんだかく泣きながら

雲間に隠れた小鬼みたいに。

 

父さんの両手に抱かれてもがき、

おむつをはねのけようと蹴っても蹴っても、

縛られていて、疲れてくると

母さんの胸ですねているのが一番いいと思った。

         (松島正一訳)

 

Infant Sorrow

My mother groand ! my father wept.

Into the dangerous world I leapt :

Helpless, naked, piping loud :

Like a fiend hid in a cloud.

 

Struggling in my father's hands :

Striving against my swadling bands :

Bound and weary I thoughtt best

To sulk upon my mother's breast.

            "Songs of Experience"  William Blake

 

面白いですね。

 

無垢と経験の対比というか、訳によっては、

 

無心と有心ともされていて、その心のありかたで

 

違ってくる世界とでもいうのでしょうか。

 

無垢から経験へというのは、彼の重要なテーマであったとも

 

対訳集にあります。

 

もちろん、ブレイクは、初期の抒情詩から、

 

前期・後期の預言書といった壮大で深淵な世界を

 

扱っていて、神秘主義者ともいわれた

 

興味深い思想家でもありました。

 

難しいことはともかく、

 

アーティストへのインスピレーションならずとも

 

いろいろな示唆を与えてくれる詩の宝庫といえましょう。

 

ブレイク詩集 (岩波文庫)

 

また、無心・有心の歌とした寿岳文章氏の

 

翻訳なども含めて、これから、じっくり味わっていきたい

 

詩人だと感じています。

 

 今日もご覧いただき、ありがとうございました。

  

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